凍(とう)
なんだかもう歴史上の人物のようなイメージがありますが、山野井夫妻によるギャチュンカン登攀のノンフィクション作品です。
フィクション小説は書き手がいろんな見せ場を作ってくれて、エンターテインメントとして読み手を楽しませてくれますが、ノンフィクションはどうしても客観的に淡々と進んでいくパターンが多いですね。過去の史実に基づいた小説になると特にその傾向が強いですが、この作品は主人公たちへの取材に基づいた構成が可能であるため、本人の内面の描写もなされていて、リアリティがある作品になっている気がします。たぶん。
たぶん、
と言うのは、遠いネパール/チベットになんて行ったことがなく、8000mの世界も体験したことのない自分にとっては、どんなにリアルに描かれていても、やっぱりリアルには感じられなかったような気がします。薄い酸素の息苦しさ、垂直の壁で一晩を明かすこと、何度も雪崩に遭うこと、また、凍傷で指を無くすことも含めて、それらがさほど特別なことじゃないように描かれているなんて、自分の生きてる世界ではあり得ないことです。フィクションならそのつもりで読めるのに、これが現実の話となるといろいろと考えてしまいました。
小説の内容よりも、到底自分にはこんな山行は無理、という気持ちが強く残った作品でした。
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