北緯66.6°



著者自身が北欧ラップランドを歩いた様子を綴った山行記。いや、そんなに山登ってないから紀行文・放浪記かな。もしくはただの日記のようであったり、思っていることを書きなぐった個人的な落書きのようなものであったり。

抜粋:
「テントはどこに張ってもいいんですか?」
「水はそのまま飲めますか?」
「焚き火はできますか?」
このアジア人はなに寝ぼけたことを言っているのか? テントを張っちゃいけない山がこの世界にあるのか? あったら教えてちょうだいよというような表情で彼女はすべての問いに「イエス」あるいは「オフコース」と答えた。

なかなかに興味深いやりとり。日本の山は基本的にテン場が決められており、そこかしこに自由にテントを張って好き勝手に寝ていいわけではない(らしい)。特に国立公園なんかは厳しく、幕営指定地の遵守はもちろん、コース外を歩く事も基本的にNGであったり、動植物の採取なんかはもってのほか。このような日本のトレッキング環境と対比させる形で、ラップランドの大らかな環境が描かれています。

環境面以外でも、ハイクの様式やハイカー達の目的そのものの対比も面白い。日本人は短い休暇の中で忙しく動き回る山行スタイル。朝寝坊は怠け者と言わんばかりに早朝から活動を開始し、コースタイム通りもしくはコースタイムを上回るペースで歩くことに喜びを感じ、どこかの100の山のピークを踏むことだけが目的となってしまっていたり。

それに対して北欧ハイカーは、自然の中に身を置いて日光を浴びることだけを目的としたり、5日で歩けるコースをのんびりと倍の日程でゆるゆる歩いているんだそうな。ふーむ、豊かな人生。余裕が感じられます。なかなか日本人にはできないことかも知れません。

あれ?

と読み終わって気づいたのは、もちろんこの本には北欧の自然についてや、北欧のハイク事情についていろいろと書かれていたはずなのに、あまり記憶に残っていないのです。北欧のことよりも、著者が世間や、誰かや、何かにぶつけたがっている『思い』や『主張』のほうが、印象に残る一冊なのでありました。(テントの中での排泄のくだりは面白かったです。)



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The 9th trail. のあるじです。右往左往しています。