黒部の山賊


ニヤニヤ。
ワクワク。
これは面白かった。/


舞台は戦後。黒部の源流域。
人を寄せつけいない北ア最深部である黒部に生きた山賊たちの生き様が綴られている。戦後の食糧・物資不足が続く困難な時代からの小屋の立ち上げや、山賊たちが獣や岩魚を狩る様子、ちょっとしたミステリー小話など、そのどれもが興味深い。
テーマごとの章立ては時間軸が前後する場合があり、ストーリーとして規律があるわけではないが、これはそういう本ではないのであまり気にならない。各章はそれぞれに異なる面白さがあり、書き手が書きたいことを自由に書いている楽しさがこちらにも伝わってくる。


山へ出掛けると、
どこへ行っても人がいる。
どこを歩いても人工物が目に入る。
すでに拓かれた登山道を歩き、
あらかじめ決められた場所にテントを張る。
あるいは快適で充実している山小屋に泊まる。
道具は日々進化し、
宇宙には衛星が飛び、
自分の居場所は正確に判り、
場所によっては下界と話す事も可能だ。
こんな今を歩くボクたち。
かつて、このような時代があったのかと思う気持ちと。
黒部源流域をじっくり歩いてみたいと思う気持ちと。
ワクワクする読後感であった。

定本黒部の山賊 [ 伊藤正一 ]
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